
マイベストにデザインマネージャーとして入社してやっていること・やりたいこと
December 4, 2022
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Jan 2, 2023 12:19 PM
書きたいことはたくさんあるので、ひとまずSlackでリクエストを募ってみました。「デザインチームとしてやりたいこと」を書こうと思います。
そのうち推してる人かきます

お前は何者だ
デジタルプロダクト・グラフィックどちらものデザイナーです。大学時代にデザイン会社でアルバイト → 公務員 → フリーランス/クリエイティブチーム → ERPメガベンチャー → フリーランス → スタートアップ(創業期〜Series B)でデザインに関わっていました。また、働きながら4年間国内MBAにいっていました。
特に、創業時から直近まで3年間所属したTerassでは強烈に充実した期間でした。Terassは、不動産エージェントの独立した働き方を一からデザインして、住宅購入・売却をよりよいものにするスタートアップです。
私が最初に関わった時はインキュベイトファンドのオフィスに4人。組織・メンバーとして初めての課題が無限に湧き上がってきて、目まぐるしいスピードで新しいことに取り組む環境でした。デザインシステムをつくったり、React/TypeScriptでプロダクト開発したり、SQLのクエリを100個書いたり、Salesforceで基幹系システムを立ち上げたり、Web CMをつくったりなどなど……デザイナーという職種関係なくハードな挑戦ができました。そして、めちゃめちゃ優秀なメンバーと密に働けた経験が最高でした。
有望企業なので「不動産DX」「個の時代」といったキーワードに興味ある方はこちらへどうぞ。年内は私もカジュ面します!
入社した経緯と理由
代表の吉川とはマイベスト創業間もない代官山のマンション時代に知り合い、とあるプロジェクトを一緒に立ち上げたのがはじまりです。そこから、業務委託で時折手伝うような期間が3, 4年ぐらい。あらためて声をかけてもらったところです。
入社するまでに他のメンバー含め5回以上ミーティングした気がします。今後の展望や役割期待、私のWillや譲れないところをすりあわせをおこないました。(実際にNotionでリストを提示し、読み合わせもしました。)だいたいの内容に是非もないということでした。
めっちゃ悩む
最初はフラットに考えていましたが、本当に転職するかはめっちゃめちゃ悩みました。
実際には、前述のTerassでは短期的にも中長期的にも実現したかったことのほとんどが道半ばでした。自分が初期から関わった企業・サービスで1->10, 10->100のステージを迎えるチャンスは直感的に、ものすごい価値がある。
加えて、創業時のデザイナーがEXITまでスタートアップにコミットし続けた例がほとんどないことに課題感がありました。そのチャレンジは1つのテーマでした。おまけに、実務的にいろんな役割を掛け持ちしていましたから、影響もそれなりにある。(このフェーズに属人性はつきものですね)
私の選択にはたくさんのブロッカーがあったわけです。
そうした葛藤がある中でいったりきたりで悩み、社内・社外に10人以上に相談するぐらいに悩みました。特に人事の小柴さんはめっちゃ相談のってくれて、ありがとうございました。
(めっちゃ前職のこと書くじゃん。)
結果的に、今後の成長は他のメンバーに委ねることにして(半年程度の怒涛の引き継ぎをして)、マイベストに来ることになりました。
転職しないで挑戦を続けることもよしとした上で最後はキメだったのですが、次の要因に整理してとらえました。
toCサービスのワンプロダクトであること
まず、toCのデジタルプロダクトにインハウスで仕事したいと考えていました。ワンプロダクトということは、組織の全資源がワンプロダクトに集約されていることを意味します。デザイナーの機会が自ずとサービスのど真ん中にあることは個人的にプラスでした。toCサービスを展開する企業はマルチプロダクト展開する傾向が強いので、マイベストのような会社はほとんどどないと思います。
これまでの経験を総動員できる環境であること
述べたとおり、私は浅く広くジェネラリストなので、自分で設定した立ち位置から、これまでの経験にレバレッジをきかせて仕事することが叶う環境でした。実際に社員全体では200名前後いますが、開発チームはまだスタートアップのような規模です。人数に対して事業規模が大きく、プロダクト・ブランディングの両面でスケールの大きなチャレンジを早くとれるということ。
選択という抽象的な課題であること
Googleは検索、mybestは選択、Amazonは購入…というような表現をよくするのですが、マイベストのテーマはそれぐらい抽象的でファンダメンタルです。「選択」というテーマの優れているところは、誰もがターゲットになりうるプロダクトになりうるのと、終わりがないことが両立していることです。なにより、ミッションに「最高の選択体験を実現する」と書いてある。ミッションがUXの実現です。デザイナー的にはめっちゃおもしろい。
デザインの基本的な考え方
正しい課題を解いているか?
デザイナーの役割期待は業界や組織によって異なりますが、すべてのデザインプログラムマネジメントは次のような思想に基づいています。※入社時に展開したスライドを引用。
デザインの役割を妙に表現した有名な言葉があります。
Design is too important to be left to designersデザインはデザイナーだけに任せるには重要すぎるRaymond Loewy [1893 - 1986]( IDEOのTim Brown氏とする記述もよくありますが、IDEOの方に聞いてるところです)
どういうことか。それは、デザインには必ず目的と対象が存在するということです。たまたま会議室にいる誰かが好む見た目をつくることにはまったく意味はないということ。

よくいうたとえですが、めちゃくちゃ優秀なデザイナーと呼ばれる人がやってきたとして、「正しい課題」がなにかを即座に正しくこたえることは不可能です。
- 事業や組織の目的によって、課題認識のベクトルが異なる。
- デザイナーはユーザーではないし、ユーザーが正しく課題認識しているわけでもない。
デザインのプロセスでは課題の特定・解決策の実行・検証をおこなうことが必要であると考えています。このスライドのメッセージは、次のようなものです。
- 正しい課題を正しく解かなければデザインがよりよくワークしているといえない。
- 課題に対して、正しい解決策を探索・収束するのはデザイナーの専門性である。
- 仮説・解決策どちらも、正しいかは検証しなければわからない。
デザイナーの役割とは別として、デザインのプロセスを上記のように定義しています。
デザインはだれの仕事か?
さて、デザイナーや他の職種のメンバーはどのようにデザインに向き合うべきか。社内では、ダブルダイヤモンドモデルを引用して説明しています。ダブルダイヤモンドは、デザインのプロセスを、課題と解決策それぞれに発散と収束をおこなうことと捉えたモデルです。

前述のとおり、正しい課題がなにかはデザイナーだからといってわからない。だから、課題を見つけるフェーズは職種横断で組織で取り組む。デザイナーはそのプロセスをリードする。
一方で、課題をふまえて解決策を特定する取り組みは、さまざまな方法で解決するデザイナーの専門的な職能を生かしていく。
上記のような方針のもとにデザインチームを運営しています(まだ少しずつですが)。
入社して2ヶ月でやったこと
私が入社したタイミングはデザインチームが大幅に増員した時期。規模に伴ってチームとしての取り組みがおこなえる・必要となる状況でした。
私はプレーヤーをしながらも、いわゆるデザインプログラムマネージャー(DPM)のような役回りをしています。入社して2ヶ月で、次のような大小の取り組みをスタートしています。
- デザインレビューの制度化と運用をスタート
- デザイナーの夕会を毎日実施
- デザイナーオフサイトを実施(Qの切り替わりごとに)
- Design Ops Weekly: 毎週新しいDesignOpsやプロセスにチャレンジする取り組み
- デザイン勉強会を毎週実施(デザイナー以外も参加可能)
- 施策検証プロセスをデザイナー主導で実施
- 他部門とのクリエイティブに関するタッチポイントを定例化
その他にもたくさんやっています。デザインチームは基本的にバラバラに集まったメンバーで構成されたチーム。こうしたことがうまくいくかは少し不安がありましたが、みな非常にポジティブに取りくんでいる現状はとても幸運でした。
(私はバサバサ仕事するタイプなので、あまりいうタイミングがつくれてませんが、至らないところでたくさん助けられています。みなさんありがとうございます)
私の感覚としては、自分が立ち上げまくって頑張った、というよりもやる理由や協力的なメンバーがいたからすんなりできたという感覚が強いです。メンバーそれぞれが試したいことをチームで提案して、気軽に試せる状態をめざしています。
さて、ここからは実際の進行中のプロジェクトをケーススタディとしてご紹介します。これらの多くは横断課題とよばれる、中長期的な視点でとりくむプロジェクトです。デザインチームのメンバーは、Missionとよばれるチームに所属し、それぞれがOKRを定義してとりくんでいます。

Designing Design System / 高度なデザインシステムの設計と運用
デザインシステムはmybestのデジタルプロダクトやブランドデザインを構造化・体系化したものです。デザインシステムはデザインを標準化することで設計・実装のコストを削減するとともに、ユーザーに一貫した体験を提供することができます。国内では、SmartHR Design Systemが有名です。
ところで、自社独自のデザインシステムの導入は設計や実装のコストがかかります。スタートアップのデザイナーでよく話題に上がるのは、この投資判断や普及をどう推進するかという悩みです。興味深いことに、マイベストではこれを後押しするモメンタムが2つありました。
- 基盤が散在していた他言語版マイベストの基盤統合に伴う、Next.jsへの移行がはじまるタイミングである。
- アプリ版マイベストをReact Nativeで立ち上げるタイミングである。
そんな好機で、Web版・アプリ版のデザインシステムを同時に設計することができています。月3,500万UUのプロダクトのデザインシステムに一からとりくめる環境はそうそうありません。
マイベストのデザインシステムは、エンジニアとデザイナーが共同で設計をおこなっており、コードとデザインの密結合な運用をめざしています。Design Tokensを共通化したり、コンポーネントやprops設計を全体最適で一気通貫でおこなっています。
デザインシステムはひとつのオペレーション戦略である。柔軟性や汎用性を高度に設計・運用するには、職種間の連携が決定的に重要です。
まだデザインシステムはこれから日の目をみるところですが、開発関係者やディレクターも共同管理できる体制をめざしています。多くの職種を巻き込みながらすこしずつ拡大発展させることで、デザイナーにとじたり、エンジニアにとじたりせずに運用すること。そうして、よい体験をスピーディに実現できる組織プロセスにしていくことを目指しています。

Designing Design Research / デザインリサーチの導入
デザインリサーチは、デザインのための研究活動です。つまり、仮説を探索し、検証するプロセス。マイベストでは、プロダクト開発にデザインリサーチを取り入れようとしています。
まずはABテスト(定量・評価型リサーチ)をデザイナー主導でおこなうことをやっています。デザイナーの菊地さんが記事を書いてくれましたのでこちらの記事をご覧ください。
世の中の現場ではいいデザイン、悪いデザインみたいなものの見方がよくあります。しかし、冒頭に書いたとおり、ユーザーの本質的な課題を解いているか、ユーザーによい体験を提供できているかは検証してみなければわかりません。
そして、特に「中の人」こそがバイアスがかかりやすいジレンマのなかで私たちは何かをつくっています。(英語版Wikipediaには、認知バイアスの一覧という記事があってものすごくおすすめです)
体験の仮説が正しいかということにおいては。私のなかでは、デザイナーの意見だろうと、代表の意見だろうと、会社の前を歩いている人となんら変わらないものとみなしています。だから検証することが大事。
ABテストはときに、数字だけを追求する活動に陥ることもあります。けれども、そのあたりはあまり心配していません。なぜなら、マイベストのビジネスモデルの成否は根本的にユーザーがよい選択、よい体験をすることに委ねられているからです。そして、ユーザーを最優先に位置づける文化がある。いわゆるダークパターン(ユーザーを誤認させて便益を得るようなデザイン)は、まったく許容されません。そんな土壌が職種限らずすでにあるのはデザイナーとして恵まれています。

UX Discovery / 選択UXの探索と定義
選択体験というものが何か、分かってるのかよく分かっていない。
なにかを選ぶというのは非常にプリミティブな経験。同時に、選択の対象となる財・サービスを特定せずにプロダクトを提供しています。つくっている自分たちが漏れなくマイベストのコアファンでです。
選択というのはいうまでもなく人によって違うし、同じ人でも洗濯機と洗剤ではまったく異なる経験です。だから、みんなの頭にみんなのUXが思い描かれるということが普通に起きます。中の人はバイアスまみれです。代表もそうだし、デザイナーもそうだし、コンテンツに関わるメンバーもそう。
最高の選択体験とはなにか。
いかにも色々な言い方ができそう。UX Discoveryは、プロダクトロードマップの前提となるUXの形式知化を目的としたデザインリサーチプロジェクトです。組織的によいUXを実現するためには、リサーチで得られたインサイトを分かりやすくこれまでも、UX検討の取り組みは何度かおこなわれており、土壌ができていました。そうした仮説を参照しつつ、仮説の探索と検証をユーザーインタビューを含むプロセスで取りくんでいきます。
マイベストはSEOで有名ですが、プロダクトの意思決定をもっぱら定量的な成果に基づいてやってきた会社ではありません。あくまでユーザーのためによいコンテンツやサービスをつくることで収益がついてくる。そうした前提思想としてサービス運営しています。それは代表がたびたび全社に発信しているだけでなく、全社的な評価制度やプロジェクト構成もそうなっていると感じています(すみません、考察あっているか誰か壁打ちのってください)。
同期入社の岸本さんもそうらしい

UX Discoveryはマイベストなりのデザインリサーチをデザインするプロジェクトでもあります。定性的なリサーチを継続的な活動にできるように、適切なサイズでスピード感をもって取りくんでいきます。

Rebranding 2023 / マイベストの純粋想起を形成する
ところで、ここまで読んでくださった方に聞くのはどうかと思いますが、mybestはご存知だったでしょうか?アクセスは月3,500万UU。単純計算でおじいちゃんおばあちゃん含めた日本人の4人に1人がみているのです。
そういうと驚く人が多いですが、さすがにそこまで認知されてないのが現状です。マイベストは検索流入という選択動線のなかで、ユーザー本位のコンテンツを提供することで成長してきた歴史がある。検索で流入して、よい選択ができて離脱するという行動パターンがほとんどです。これはこれで、ユーザーに価値が提供できている(ユーザーが選択できている)のかもしれませんが、サービス認知という意味ではなかばステルス状態でやってきました。
けれど、本当はもっとマイベストを使い倒してほしい。よいコンテンツを提供しているのだから、マイベスト自体がもっと広がることに価値があります。
2023年、アプリの展開やさらなる成長をめざし、認知戦略を実行するためのリブランディングを実行します。
ブランドはもともと烙印という意味ですが、その本質は何が表現されているかではなく、人の認識のなかでどう存在しているかです。だから、マイベストのアイデンティティは、人の選択の体験ときりはなすことができない。だから、プロダクトのUX Discoveryから得られたインサイトを、ブランド価値を表現するプロセスに接続するプロセスですすめていこうと考えています。

Culture Enhancement / 組織カルチャーをデザインで加速する
組織のあり方とデザインの関係性が少しずつ注目されています。それは、組織に関わるものをおしゃれにするということではなく、組織のアイデンティティを明確にするということです。一般的にInner Brandingという呼称が使われますが、目的が明確なのでこうした言い方をしています。
マイベストは、実際に商品を購入して検証し、その情報をユーザーに届けるという他に例のないサービスを提供しています。ユーザーのために限りなくよいコンテンツを提供するために、考えうるかぎり最大の努力を全社的にやっている。それは完全に社内的コンセンサスになっている。
それらはオフィスにバリューを貼ったり、繰り返しストーリーテリングしつづけることだけではなく、自分たちの行動に裏付けられています。事実、すべての組織の構造や役割が、マイベストという1つのデジタルプロダクト、選択体験の実現に、密結合に運営されています。
入社して驚いたのは、管理部のメンバーさえも「ユーザーのために」という判断基準で、意思決定を上申していたことです。(ちなみにマイベストの管理部はかなりの少人数でプロダクトオペレーションにも関わっている超スーパー組織です。誰か取材したほうがいいと思います)
たとえば、Slackで「ユーザーのために」と検索するとたくさんでてきます。そんなフレーズはどこかに貼ってあるわけではありません。

そうしたバリューや文化の浸透にデザインにできることはもっとあると考えているわけですが、まさかカルチャーをデザインがつくるなんておこがましいことは思えないわけです。だから、Culture Enhancementといっているわけです。
おわりに
ここまで色々と書いてきましたが、どれも同じ思想で、マイベストのプロダクトや組織を通じてぜんぶつながっている仕事です。私たちは一貫したスタンスでデザインにとりくめる状況にある。ともあれ大風呂敷を広げて中身が伴っていないのが実情で、まだまだやりたかったことの達成度は20点ぐらいです。
ただ少なくとも、マイベストはデザインに投資すべき企業で、挑戦できる機会にあふれている。私も含めて能力や経験の限界を超えていく必要があります。そのために、成長して、影響できるデザインチームにしていきたいと思っています。
多くのデザイナーがデザインの価値をどう表現するかを考えています。とかくデザインの取り組みふわっとしていて掴みどころがないととらえられがち。だから、意図をもっていっちょまえな名前をつけるし、経営や技術の言葉で説明する。
あとは実績をだして、発信するということをきちんとやっていきます。もうすぐ社内にお披露目しますが、3ヶ月ごとにデザインチームの関わった仕事(それはデザインに限らず)をまとめた Designers Business Reviewと題したポートフォリオを定期的に展開してみようと考えています。
社内の方はお楽しみに

デザイナー個人として、マイベストはデザイナーのチャレンジの場としてとてもエキサイティングです。
長くなりましたが、入社理由と抱負でした。
マイベストにご興味を持った方は
マイベストでは新卒・中途採用を積極的におこなっています。ご興味のある方はぜひApplyしてみてください。
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中途エンジニア
Author
Yasuhiro Yokota
1991-, Designer
大学卒業後、行政機関で情報政策部門で勤務。株式会社ワークスアプリケーションズを経た後、フリーランスでグラフィック・デジタル双方のデザイン及びディレクションを通し、様々なプロジェクトに携わる。株式会社TERASSに創業期からシリーズBまで参画した後、2022年9月にマイベスト入社。グロービス経営大学院卒業。
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