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命名と用語法

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命名と用語法の重要性


命名と用語法の重要性は、多くの企業内で軽視しがちである。
しかし、適切な命名法と用語法の使用は、混乱を減らし、生産性を向上させる等、計り知れない価値がある。本節では、その重要性について具体的に説明する。

コミュニケーションの円滑化

まず、命名と用語法はコミュニケーションの円滑化に貢献する。
企業の中には、同じ概念や要素を指すために複数の異なる言葉を用いる場合がある。このため、社員間で誤解が生じ、意思疎通が困難になることがある。命名と用語法を統一することで、このような誤解を防ぎ、スムーズなコミュニケーションを可能にする。

効率的な情報処理

一貫した命名と用語法は効率的な情報処理を可能にする。
たとえば、データ管理の文脈では、一貫した名前付けが重要である。同じデータに対して異なる名前が付けられていると、それが同じ情報を示すものであると認識するのが難しくなり、それによって時間を浪費する可能性がある。また、情報を記憶しようとするときも、一貫した用語の使用は記憶を容易にし、誤解を防ぐ。

ハイコンテクストとローコンテクストの視点から

ハイコンテクスト文化とは、言葉だけでなく、その場の空気や状況、関係性から多くの情報を読み取る文化のことを指す。対して、ローコンテクスト文化では、言葉そのものに重きを置き、直接的で具体的な情報伝達が主流となる。これらの視点から命名や用語法の重要性を掘り下げてみよう。
  • ハイコンテクストの視点 用語法は、その背後の状況や意図、文化、価値観を伝える役目を担う。同じ言葉でも、その使われ方1つで、その企業の風土や個々の意図を感じ取ることができる。したがって、適切な用語法は、風土の理解や、互いの意図の理解を深める助けとなる。
  • ローコンテクストの視点 企業内の命名や用語法が明確であることは、情報の誤伝達を防ぐ上で重要となる。各用語が何を指すのか明確になれば、その用語を用いたコミュニケーションは具体的で明快になる。結果的に、情報の誤伝達や誤解を防ぐことができる。

不適切な用語法がもたらす事態

業務中の文書化やコミュニケーションにおいて、使われる用語や表現方法は非常に重要である。ここでは、その用語法が不適切だった場合に起きる可能性のある困り事を具体的に挙げ、その理由について解説する。
  • キャッチアップコストが高い: 用語法が不統一やあいまいであった場合、それぞれの用語や表現について理解するためのコストが必要となる。これは時間だけでなく、心理的な負担も伴う。
  • 加速度的に普及してしまう: 人間は集団内でのコミュニケーションを通じて自然と言葉を学習し、それが普及する。用語法が不適切だと認識しつつも、その場の雰囲気や適応のために不適切な用語法を使用してしまうと、その誤った用語法がどんどん広まってしまう。
  • 発信者による全体の信頼性: ある発信者による用語法が不適切であると、読者は発信者自体の信頼性に疑問を持つ可能性がある。それにより、発信者の意図した通りに情報が伝わらなかったり、重要な情報が見過ごされる危険性がある。
  • 言語感覚に敏感なほど損をする悲劇: より適切な表現方法や用語法を心がけている人ほど、その差異や不適切な表現に、疲労やストレスが増大する。
以上のような困り事が起こる可能性があるため、企業内では用語法の統一や適切な表現の使用について意識し、それを定着させる努力が必要。
そして、これらについて高い品質水準を達成することは、企業のコストを抑えると同時に、理に適った方法である。なぜなら、一貫性と明確性と排他性を実現するためのコストは、その結果生じる誤解や混乱によって生じる潜在的な損失に比べれば、はるかに低いからだ。したがって、一貫性と明確性と排他性への投資は、間違いなくその価値があると言えるだろう。

用語法のための仕組み

用語法の命名や呼び方を整備するための方法論を紹介する

ユビキタス言語 - 辞書をつくる

ユビキタス言語は特定のプロジェクトやチームだけでなく、企業全体で共有され、一貫性を持たせた言語のことを指す。企業内のすべてのメンバーが同じ用語を同じ意味で理解し利用することで、誤解を防ぎ、効率的なコミュニケーションを実現する。
  • 例えば、「顧客」という言葉は、営業部では「商品を買ってくれる人」を指し、開発部では「商品を使用する人」を指すといったように、部署によって意味するところが違うことがある。しかし、全社で一貫した意味合いで使うことで、混乱を避けることができる。

命名規則 - 新しい用語を縛る

命名規則とは、企業内での文書、データ、プロダクトの命名に関する一連のルールである。一貫した命名規則を設けることで、それぞれの名前が何を指しているのかを容易に理解でき、必要な情報やリソースを効率良く探すことが可能になる。
  • プロジェクト名には目的や目標を示す言葉を含める
  • ファイル名や文書は作成日やバージョン情報を反映させる
  • 用語の命名には英語と日本語のどちらを使用するか、また大文字と小文字の使い方、アンダースコアの使い分けなどを明確にする
これらはあくまで一例であるが、一貫性と効率性を重視し、全社員が理解しやすい言葉を選び、明確なルールを設けることの重要性は共通している。

命名・用語法の考え方


一貫性 - あちこちでいろんな呼び方をしない

全員が同じ言葉を使うことで、スタッフ間のディスカッションがスムーズになり、理解しやすくなる。それはつまり、より強い結束力を作り出す。また、一貫した言葉使いは、誤解や混乱を排除し、作業の効率性と生産性を向上させる。さらに、新入社員が企業の言葉を速やかに理解し、適応するのを助ける。

明確性 - 曖昧な言葉を避ける

用語が一様に決まっていることで、その曖昧さが誤解を生んだり、混乱を招いたりするのを防ぐ。それは恣意的に用語が使われ、それぞれが持つ意味合いやニュアンスがばらばらになり、結果的に同じ言葉が異なる意味で用いられることを防ぐ。

排他性 - 何を指し示さないか明確にする

各用語が一意に定義され、その用語が指す概念が他の用語と混同されないことを保証する。同じ名前が異なる概念に割り当てられていると、混乱や間違いが生じやすい。各用語はその用語のみを指すべきである。

簡潔性 - 簡単に読むことができる

  • 適切な単語の短縮と省略: 長い単語やフレーズは可能な限り短縮・省略する。例えば、“Customer Relationship Management”は“CRM”と短縮可。
  • 誤解を招かない範囲での省略: 特定の専門用語では、全ての文字を使用せず初めの数文字で省略することが一般的である。ただし、その省略が誤解を招かないことを確認すること。
  • 意味の重複を避ける: “PIN number”や“ATM machine”のような冗長表現は避ける。

論理範囲への整合性

通常、用語はなんらかの範囲を指し示す
  • 名前が広すぎる - 過剰な一般化: 特定の用語が極めて広範な意味を持つ場合を指す。これは誤解を生じやすく、実際には関係のない事項まで含まれてしまう可能性がある。例えば、「プロジェクト」や「システム」といった抽象的な概念がその対象となる可能性がある。これらの言葉が一般的過ぎるため、使用する際はその範囲を限定し、明確に定義することが重要である。
  • 名前が狭すぎる - 過小な一般化: ある用語が極めて限定的な範囲しか指さない場合を指す。例えば、「Oracle Database」といった用語が当てはまるかもしれない。この場合、「Oracle Database」はあくまで一つのデータベースシステムを指すため「データベース」一般を指す用語として使用するのは適切でない。

略語の使い方と注意点

企業内において様々な情報が飛び交う中、略語を使うことでコミュニケーションの効率化が図られる場合もある。たとえば、会社の部署名や特定のプロジェクト名など、頻繁に使用する長いフレーズなどが当てはまるだろう。
しかし、略語の一部や新たに作られた略語は受け取る側への配慮が必要である。
略語のデメリットは次のとおりである。
  • 新規に参入したメンバーや外部の人にとっては理解しづらい
  • 略語には複数の意味が含まれることがある
  • 略語の存在しない地域や業界で使われると混乱を招く
初めてその略語を目にした人がすぐに理解できない場合、それはコミュニケーションの障害となるだろう。また、同一の略語が複数の概念を表す場合、誤解を招く原因にもなり得る。
したがって、以下のような対策を講じることが推奨される。
  • 略語の初出時にはフルネームを併記する
  • 適切な場所(例:社内Wikiなど)に略語表を作成し、常に参照できるようにする
略語の使用は、一見効率的に見えるが必ずしも全ての状況で役立つわけではない。その効用とリスクを考慮した上で、適切な使い方を心掛けるべきである。

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